- Filmarksで星4つ以上!
- サブスクではあまり観れない!←なんとU-NEXTで配信開始(23年9月現在)
- 大きな作品賞を受賞していない!
- 筆者がつい何度も観てしまう程好き!
そんな自他ともに認めるも隠れた名作「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」をご紹介したく存じます。
1997年公開のドイツ映画で、病気で余命わずかな2人の若者が海を目指すロードムービーです。
わずか90分の上映時間で2人の出会いから最期の時までを描き、誰もが納得するエンディングに導いてくれるのがこの作品の素晴らしさだと感じています。
公開当時から根強く好まれている作品ですが、著名な監督や有名俳優が主演している訳でもないのに、現在でも高評価をうけているのはかなり稀で驚異的な事ではないでしょうか?
日本の若手俳優さんが好きな映画にこのタイトルを挙げていて、世代関係なく深い印象を残す名作なんだなとしみじみ感じました。
現在、配信サービスではあまり見かける事の少ない作品ですが、レンタルは可能ですし、廃盤になるなどして観れなくなる前に購入して永久保存するのも選択肢に入れるべき名作だと思います!
レアな本作の配信開始されました!お見逃しなく(23年9月現在)
<作品情報>
1997年公開(日本公開1999年)、90分、ドイツ、アクション/クライム
監督:トーマス・ヤーン
脚本:トーマス・ヤーン、ティル・シュヴァイガー
キャスト
マーチン・ブレスト:ティル・シュヴァイガー
ルディ・ウルリツァー:ヤン・ヨーゼフ・リーファース
ヘンク:ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ
アブデゥル:モーリッツ・ブライブトロイ
カーチス:ルトガー・ハウアー
<あらすじ>
脳腫瘍で余命数日と宣告されたマーチンは病室でタバコをふかしていた。
その病室に入って来たのは骨肉腫の末期と診断されたルディ。
何故か病室に残されていたテキーラ。2人は瓶を片手に塩とレモンを求めて病室を抜け出し厨房へ。
余命僅かな2人の若者の会話は死後の話へ流れ「天国では海の話が流行ってるらしい…」とマーチン。海を見たことがないと言うルディ。
テキーラの酔いも手伝いふらふらと病院を抜け出した駐車場。幸運にもベイビーブルーのベンツのドアが開き、キーが天から降ってきた。
駐車場内を蛇行運転していた車を止めて訪ねる「出口はどっちですか?」背広姿の2人組が指し示す方へ車を走らせゲートを強行突破。マーチンとルディはまだ見ぬ海を目指す…
<ややネタバレあり感想>
※ここからは若干のネタバレがございます。これから鑑賞する方でも支障がない程度にとどめておりますが、1ミリも知りたくないという方はお控えください。
天国への思いを馳せる2人の会話や粋な演出がとてもロマンティックな導入部ですが、旅が始まると少し趣が変わり、2人に車を盗まれてしまったギャングや警察との追いかっけこがコミカルに描かれています。
2人がかっこいいスーツを買うために銀行強盗に入ったところ割とすんなり上手くいってしまい撤退した直後にギャングが強盗に入って、到着した警察にギャングの方が追われてしまうという…まぬけな展開がコントのようで笑えます。
あとギャングと警察の銃撃戦があって車体はハチの巣になるのですが、死傷者はゼロと至って平和(笑)
堅苦しくなりがちな“死”を題材にした作品に、こういったコメディのような描写が緩衝材のよう挟み込まれていて、そのバランスが絶妙なのでとても観やすいです!
すんなりベンツも調達、初めての銀行強盗も成功!更に盗んだベンツのトランクには大金の入ったアタッシュケース(何故かロックはかかっていない)が入っていて大金ガッポリって楽しそうな道中だけど…
「なんか、いくら何でも上手く行き過ぎじゃないですか~?」
っていう感想を見かける事がありますが、その度に筆者は思います。
「なんか問題ありますか?」…(怖)
脚本家はあえて都合良過ぎる楽しい話にしているのではないでしょうか?
上手く行き過ぎる事柄の全ては、死する者への神の粋な計らいか、はなむけ*1なんじゃないかと思えてなりません。
「天国ではみんな海の話をしているらしい」なんてかっこいいセリフに聞こえますが、その一方で(生きる)希望がもはや天国にしか残されていない切なさも伝わってきますよね。天国では海の話と共に語れそうな武勇伝も出来たので、めちゃめちゃ人気者になりそうです。
まとめ
監督のトーマス・ヤーンはタクシー運転手をしながら、密かにしたためていた脚本をティル・シュヴァイガーに見せたところ気に入って映画化に向けて動いてくれたとか、絶対出て欲しかった有名俳優ルトガー・ハウアー(ギャングの大ボス役がめちゃくちゃ渋いです。)に出演してもらえたなんて裏話を聞くと幾つもの奇跡が重なって生まれた名作なのだと思えます。
その中でも一番驚かされるのは、主人公を演じる2人が出会うべくして出会ったとしか思えない程の相性の良さを感じさせる所です。簡単に言ってしまうと何故か上手くかみ合っている陽キャと陰キャみたいな(笑)
バディものでは王道のデコボココンビだからと言うだけにとどまらず、穏やかなふたりの佇まいに相性の良さが滲み出ているといった印象です。それが一番感じられるのはやはり海でのラストシーン。念願の海を見つめるふたりの表情は、逆らう事のできない運命へのせつなさが溢れているように見えました。
そして、エンドロールに流れるボブ・ディランの名曲「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(本作で流れるのはドイツのバンドSELIGによるコピー)は至極でございます。
是非一度、ご覧になってみて下さい!
THE END
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*1:旅に出る人に贈る、品物、金銭、詩歌など。餞別。