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「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想

一切情報が明かされる事なく7月14日公開日を迎えた、宮崎駿監督最新作「君たちはどう生きるか早速観てきました!

(C) 2023 Studio Ghibli

 

事前に公開されたのは、このポスター1枚だけです(笑)

この様な事は前例がないのでは?と思いましたが、それはインターネットが普及し始めてからの話であって、それ以前は前情報なしに映画を観に行くのは当たり前でしたよね!

若者なら、逆に新鮮!と思うでしょうし、私もなぜかワクワクしてしまいました。

情報だけ見て「あー、そういう感じの映画ね。」と観に行くの止めっちゃたりする事ってありますからね。多すぎる情報は人から好奇心を奪ってしまうのかもしれません。

 

観てみた印象では、登場人物は少ないですし、分かりづらい設定の話ではないので予備知識は必要ないタイプの作品だと思いました。

映画館で観るジブリ映画は臨場感があって格別です!

 

<声のキャスト>

牧眞一/山崎聡真

眞一の父親/木村拓哉

アオサギ/菅田将暉

ナツコ/木村佳乃

ヒミ/あいみょん

キリコ/柴咲コウ

 

<あらすじ>

時は第二次世界大戦の最中。入院中だった眞一の母親は病院で大火にのまれてしまう。残された父・しょういちと眞一は田舎へ疎開することになった。疎開先では、眞一の新しい母親・ナツコが待っていた。ナツコは妊娠している事を眞一に告げた。

到着した広い屋敷には、7人の婆やと爺やが居て、何かと眞一の世話を焼いてくれる。

屋敷の中の様子をうかがうように、屋敷の周りを旋回するアオサギ

ある日眞一は、屋敷近くの廃墟となった洋館にアオサギが潜り込むのを見かけ、後を追いかけるが、アオサギは消え下へ続く階段は塞がれていた。

ナツコの話によるとその洋館は眞一の大叔父の所有物であったが、本の読みすぎでおかしくなってしまったという大叔父は姿を消してしまったそうだ…婆やのキリコも呪われた館だという。

眞一は新しい学校へ父の運転するダットサンで登校するが、下校途中、生徒たちと取っ組み合いのケンカになってしまう。そして道端の石を自分の頭に叩きつけ、頭から大量の血が流れる。

転んだだけと言い張る眞一だが、その言葉を信用しない父親は学校へ抗議しに飛んでいく。

眞一を挑発するように、部屋の窓際に現れるアオサギ。なんとアオサギ「ハハギミハ イキテマッセ シンデナンカイマセンゼ」と眞一に語り掛けた。

最近つわりで調子が悪いナツコだったが、眞一はナツコが森へ入っていく姿を目撃する。その後ナツコが消えたと騒ぎになり、眞一がナツコを見かけた森へ入っていくと、洋館の裏口が見え、そこには明かりが灯っている。

中にナツコが居ると言うアオサギに導かれ、眞一は洋館の中へ入っていく。引き止めたかった婆やのキリコも仕方なく洋館の中へ…

 

<上の世界と下の世界>

あらすじに書いたところまでが、ザックリとですが上の世界での出来事で、ここから先の話はナツコ、眞一、婆やのキリコが下の世界での描写になっていきます。

なので上界では突然居なくなってしまったこの3人をみんなが探しているのです。

 

そして正直、ここからの話はあまり理解できませんでした(笑)

でも宮崎駿本人が作りたいものを作って、理解しているならそれでいいよね…と思ったら、試写会で「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました。」とコメントしていたそうです。

正直でいいですね(笑)

 

<私が嫌悪感を感じたシーン>

それはナツコが眞一の手を自分のお腹に当てて「妊娠してるの。弟か妹が出来るのよ。」というシーンです。しかもこの後に、ナツコは眞一の母親の妹である事が分かる会話があり、ギョッとしてしまいました。

思春期の男の子にはキツイ状況ですよね?この状況をどう克服していくのか?そこが物語の肝だったように思います。

眞一が血塗れで帰宅した事を、ナツコは自分のせいだと感じていました。単純に学校へ行きたくなかったとも取れますが、おそらくナツコへの当てつけで眞一が自作自演したケガだったのだと思います。

物語の終盤で「この傷は自分でつけた悪意です。」と言っていましたね。

 

異世界

この下界という場所が色々盛り沢山な所でした(笑)

とってもファンタジー宮崎駿ワールド全開なのですが、いくつかに分かれていてそれぞれに意味を持つ場所なのかもしれません。

出てきたワードだけ拾っても、お墓、地獄、天国、呪われた海、産屋、ヒミという少女の家…一体ここどこ?ってなる不思議空間。

異世界に通じる木のトンネルはとなりのトトロに出て来たトンネルとよく似ていました。このトンネルを抜けて眞人の冒険が始まる展開はワクワクしました!

 

<わらわら>

上界に行って人間に生まれ変わるのだという、わらわらと言う白い風船のような生命体。わらわらの為に魚を捌き、ご飯を食べさせるキリコの姿は上界でのキリコ婆の役割と同じです。

上界に上がっていくわらわら達がペリカンに食べられそうになった時、花火を打ち上げてペリカンを焼き払い、わらわらを助けたヒミ。

とにかく可愛いわらわら

眞人の妹か弟になるであろうわらわら

わらわらを必死に守ろうとする2人の姿を前に、眞人の意識は変わっていったのですね。

もののけ姫に出てくる木の精霊「こだま」によく似ていました。

<何故ヒミとキリコは若いの?>

過去にヒミとキリコは1年間行方不明になり、その間この下界で暮らしていたようです。異世界には時間軸が存在しない様なので、その時の年齢のまま現れたのでしょう。

キリコ婆、嫌がっていたけどよく再び入ったなと思いましたが、なんとなく嫌な感じはするけど、過去に下界にいた記憶自体は消えているようでしたね。

宮崎駿監督の作品は陽気で元気なお婆ちゃんがよく出てきますが、今作ではなんと7人も(笑)

眞人をとり囲む7人は「白雪姫と7人の小人」そのもので微笑ましかったです!

キリコ婆の若き日の姿は、勇敢なカッコイイ女性で、柴咲コウさんのクールな声がぴったりハマっていました。

 

そして…ヒミは眞人の母親でした。割と早い段階で眞人本人も母親だと気づいていたようでしたね。

ヒミ手作りのジャムトーストが今作のジブリ飯でした。母の味は手作りパンなのでしょうか?魔女の宅急便の主人公キキとヒミは少し雰囲気が似ているように思いましたし、同じ年頃の2人が協力して困難を乗り越えていく姿には、ついつい大好きな天空の城ラピュタのシータとパズーを重ね合わせてしまいました。

 

<鳥!鳥!鳥!>

アオサギペリカンセキセイインコ鳥三だった今作。それぞれの個性が生かされた面白いキャラクターでした。

相まみえると必要以上に鳥のフンだらけになってしまうのには、何か意味があるのでしょうか?(笑)

個人的にはセキセイインコの鼻息荒いのが可笑しかったです(笑)

いづれも、悪者として描かれているのですが、よくよく知るとそんな悪い奴でもなかったり、それには理由があるということが分ります。

アオサギも鳥の皮が剥がれると中からおじさんが現われてきました。菅田将暉のアテレコも、商売上手で声ガラガラの商人おじさんみたいで良かったです(笑)

このキャラのお蔭で眞人の心もほぐれて、最後は友達になってしまいました。

ペリカンの存在には資本主義、インコには軍国主義の風刺が入っているように見えました。社会や時代背景に翻弄されてしまった切なさや哀愁を感じます。

 

因みに、ナツコが居た出産するための部屋、産屋(うぶや)もその昔、屋根に鵜(う)の羽を葺(ふ)く風習があったそうです。

 

君たちはどう生きるか?>

大叔父のブックコレクションの中から出て来た?であろうこの一冊。

今作のタイトルにもなっている、1937年吉野源三郎の小説。

眞人が表紙をめくると「大きくなった眞人君へ」と母の筆跡を見つけます。

ラストシーンでは、生まれた弟や新しい家族と日常生活を送る中、カバンにこの本を入れる眞一の姿が描かれていました。

この本の内容が今作に及ぼした影響よりも、母親の愛情が感じられる、眞一にとっての大切な一冊という事の方が重要な気がします。

 

君たちはどう生きるか」という監督からの問いかけなのだとは思うのですが、今作を見た限りでは、それほど強いメッセージ性は感じられませんでした。

 

<大叔父は誰?>

塔の中では花々が咲き誇る天国に暮らし、積み石を絶妙なバランスで積み上げ、異世界の核となる石を守り管理している。

間違いなくこの世界のトップであり、インコには殿様と呼ばれていました。

自分は老い先短いので、眞一に後を継いで欲しいと世代交代を望む言葉には、どうしても宮崎駿監督と大叔父を重ね合わせてしまうのではないでしょうか?

ただ、無理に個人を当てはめる必要もないですよね?

 

大叔父が「13個の石を3分に1個積み重ねて欲しい」と眞人に提案するシーンがありましたが、13という数字が一体なにを指しているのかが気になりました。

宮崎駿監督作品の数が合計13作品だから!という説が最も有力な気はしますが…

そう言えば、眞人の年齢が明かされていませんでしたよね?

けがれの無い13の石と言っていることから、眞人は13歳なのでは…(笑)

パズーとシータも13歳ですし!(見事なこじつけです。)

 

<まとめ>

「監督が商業的な事を無視して、やりたい事を詰め込んだ集大成作品」だと感じました。セルフオマージュ満載でジブリ集大成映画と言えると思います。それと同時に宮崎駿監督の人生のオマージュ写真を見たような感覚がありました。

物語自体はシンプルなのですが、表現が抽象的なので理解しづらい部分もあり、少々不親切だと感じられますが、それぞれ自由に解釈しても十分に楽しめる作品でした。

それはやっぱり、アニメーションによる映像表現が素晴らしいから。これに尽きます!

特に日本の夏の情景や蓮池に広がる水の波紋、植物の繊細な美しさにはうっとりしてしまいました。

子供さんが観て面白いと感じる作品かは、微妙ですが…

鼻息の荒いセキセイインコはお子様たちにも観て欲しいです!絶対ウケると思います(笑)

 

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最後までご覧頂きありがとうございました!