映画は読み物。

読むほどに映画が好きになる。

『ホドロフスキーのDUNE』ホドロフスキー監督が元気をくれる面白ドキュメンタリー!

知る人ぞ知るカルト映画の巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー監督。

作る作品はどれもこれもへんてこりんで風変りで過激。真剣に観てもイマイチどんな物語だったのか?理解に苦しむ内容です。

でもその一方でアート性高い唯一無二の作風とその独特な世界観に魅了されてしまう…と言うかつい笑ってしまう。

私もホドロフスキー信者の一人です!

組合に所属しないのでなんの制約も受けず、映画を商業目的以前に芸術作品として捉え、自分の心の声に従い自由な発想で作品を作ってきた。

そんな風に生きてきたからなのか?

情熱的に夢を語るその瞳は90歳を超えた今もなお、キラキラと力強く輝いています。

そんなホドロフスキー監督の魅力を存分に堪能できるのが、ドキュメンタリー映画ホドロフスキーのDUNE」です!

「ホドロフスキーのDUNE」公式サイトより
<作品情報>

ホドロフスキーのDUNE」

2013年 制作国 アメリカ 上映時間90分

監督:フランク・パヴィッチ

出演者アレハンドロ・ホドロフスキー/ミシェル・セドゥ/H・R・ギーガー/クリス・フォス/ブロンティス・ホドロフスキー

youtu.be

そもそも「DUNE」て何?

アメリカの作家フランク・ハーバートによるSF小説のシリーズ。1965年第一作目「砂の惑星」が公開され、その後続編が著され人気シリーズとなり、映画スターウォーズなど数々のSF映画宮崎駿監督の「風の谷のナウシカにも影響を与えた作品。

<原作のあらすじ>

砂に覆われ巨大な虫が支配する荒涼の惑星アラキス、通称デューンを舞台に、宇宙を支配する力を持つメランジと呼ばれるスパイスを巡る争いと、救世主一族の革命と世界の混迷を軸にした壮大なドラマが展開される。Wikipediaより

 

ホドロフスキー監督とDUNE

1929年2月17日生まれ。チリ出身フランス国籍の映画監督。

当初舞台演出をしていたが、手探りで短編映画を撮りはじめ、1970年に公開した作品「エル・トポ」がNYの劇場でミッドナイトムービーとして公開され話題になる。

「エル・トポ」のヒットで100万ドルの出資を受けた監督は1973年「ホリーマウンテン」を制作。映画プロデューサーの二コラ・セドゥ(女優レア・セドゥの大叔父)がヨーローッパに配給したところ大ヒット作に。

「何を作ってもいいから一緒に映画を作らないか?」とのセドゥの誘いに、ホドロフスキー「DUNE」と答えたことからデューン映画化にむけて2年に渡る2人の戦いが始まった。

魂の戦士集め

映画「ホドロフスキーのDUNE」公式サイトより

映画製作に携わるスタッフやキャストのことを、ホドロフスキーは"魂の戦士"と呼んでいて、いくら才能があっても精神的な深みを感じない者ならば、一緒に仕事するのを断ってしまうのがホドロフスキーなのだ(笑)

そして、サルバドール・ダリミック・ジャガーオーソン・ウェルズといった大物が名を連ねるキャスティングが面白すぎて(笑)

しかも、今の様にネットもなく、連絡手段が限られていた時代。レストランで待ち伏せしたり、パーティーに潜入したりと、あの手この手でこの大物たちに「YES!」と言わせてしまっている?のだから、この面々が勢ぞろいする映画を観てみたかったと心から思ってしまいます。

ジョン・レノンでさえ作品に魅了されて、制作資金を援助していたという事実もあるくらいだから、ホドロフスキーなら実現可能なキャストだったと思うんですよね!

 

そして、今作では語られていない話ですが、音楽にはピンクフロイドの参加が決まっていたのですが、サントラにロックを使うこと自体初めてのアイデアだったそうです。

やっぱり凄いなホドロフスキー

 

とにかくホドロフスキーは話が上手いですし、嘘みたいな本当の話のオンパレードが面白いので是非聞いてみて欲しいです。

 

ホドロフスキーの「DUNE」はなぜ映画化できなかったのか?
  • 製作費が1500万ドルと膨大になってしまった。
  • 上映時間が12時間を超え20時間はかかる程の大作になってしまった。
  • 冒頭で書いたように、組合に所属せず自由に過激なカルト映画を作ってきたホドロフスキーハリウッドの大手映画会社に信用されなかった。

でも本当の理由は「恐れ」だと、ホドロフスキーと親交の深いニコラス・ウィンディング・レフン監督は語っていました。

ハリウッドのお偉いさん達は、凄まじい想像力で新しいものに果敢にチャレンジするホドロフスキーに恐れを抱いたのだ。

保守的で異質なものを排除しようとする体質。

これだから「ハリウッド映画はつまらない」と言われてしまうのではないでしょうか?

 

魂の戦士たちが撒いた「DUNE」の種

スター・ウォーズ、エイリアン、マトリックスブレード・ランナー、プロメテウス…あらゆるSFの名作の元ネタ?!世界を変えた未完の映画、『DUNE』。

映画「ホドロフスキーのDUNE」公式サイトより引用

 

 

紙の段階では完成していた「DUNE」ですが、いよいよセット作りに取り掛かろうという矢先、頓挫してしまいました。

しかし、ホドロフスキーと共に戦った魂の戦士たちは「DUNE」の制作によって培われ更に磨かれた才能を他の作品で遺憾なく発揮しています。

その最たるものが1979年公開のSFホラー作品「エイリアン」で、脚本はダン・オバノン、エイリアンのデザインはH・R・ギーガーによるもので、「DUNE」の戦士だった2人が作り上げた世界観なのです!

すなわち!様々なSF作品の中に「DUNE」がひょっこり潜んでいて映画史をも操る存在になっていたという事です!

 

※絵コンテは266万ユーロ(3億4300万円)で米国人により落札されたそうです。(2021年11月のニュース)

「DUNE」は未完の大作だからこそ素晴らしい?

「DUNE」の原作小説は100ページ読んでも意味不明で難解なものらしいです。(私は未読です。)映画化するには壮大すぎる物語であるため、どうしてもこぢんまりしてしまいそうです。それ程人の想像力は果てしなく具現化した矢先、別物になってしまうのかもしれません。

デヴィット・リンチ監督による1984年公開「デューン/砂の惑星は「ひどすぎる出来にうれしくなった!」とホドロフスキーを喜ばせる程「DUNE」の世界観を描き切れておらず、失敗作である事はリンチ本人も認めている。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による2021年公開「DUNE/デューン砂の惑星は原作の前半をほぼ網羅しているというから素晴らしいまとめ力だ!(まとめ力って何?笑)

主演のポール役がハリウッドのプリンス、ティモシー・シャラメということもあり、スタイリッシュに美しくまとまっている。「分かりやすくまとまっている…」これが私の感想なのでこればっかり言う(笑)きっと原作に忠実に作られているんだろうな。

2部作の後編であるパート2と、前日譚の「DUNE:The Sisterhood」2作品の公開が決定しています。

現時点ではドゥニ・ヴィルヌーヴ版が「DUNE」の実写化に最も成功していると言えると思いますが、ホドロフスキー監督の感想が聞いてみたいですね!

そもそもホドロフスキーが原作に忠実に作品をつくるなんて不可能だと思いますし、その気も無かったようですが(笑)明らかに目指しているベクトルが違う気がするので、冷静に受け止めて賛辞を贈るような気がします。

デヴィット・リンチ監督の「DUNE」

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「DUNE」

そして、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の「DUNE」

この3作を観比べてみるのもオススメです!

 

「DUNE」のその後裏話

プロデューサーのセドゥとホドロフスキーは本作の制作にあたり、およそ30年ぶりに再会する事になりました。喧嘩したわけではないものの、お互い気まずかったのかもしれません…でも再会してすぐ2人はまだ友人同士である事が分かったそうです。

ホドロフスキーは新たに制作する映画の資金援助を申し出たところ、セドゥは何も聞かず「いいよ。」と即答したそうです。

良い話というか、セドゥさん器が広くてめっちゃくちゃいい人ですよね?

そして完成したのが2013年「リアリティのダンス」です。

youtu.be

これがまた、監督の少年期の自伝的要素を含む、素晴らしい作品でした!

現在の監督の年齢は94歳ですから、84歳の時の作品?ビックリするくらい全く衰えを感じなかったです!

若い時に作られた作品は過激すぎて観る人と選ぶ傾向はあったのですが、若干マイルドになっていて沢山の人に受け入れて貰いやすい作品になっています。

ちなみに、ホドロフスキー監督の青年期の自伝映画、2016年「エンドレス・ポエトリー」も最高です!

そして更に凄いのがホドロフスキーのDUNE」「リアリティのダンス」「エンドレス・ポエトリーFilmarksの総合評価がこの3作全て4.0の高評価でした!

公開してから随分時間が経っているのに、4.0評価の作品てほとんどないですからね。

ラクルとしか言いようがありません!!(嬉しすぎて泣きそうです。)

 

<まとめ>このドキュメンタリーを観ると…
  • 「DUNE」という作品について理解を深める事が出来る!
  • ホドロフスキー監督の面白くて元気になる名言の数々が聞ける!
  • SF映画の歴史が分かり、観たい作品も増える!
  • 失敗や挫折から、実は得るものがたくさんあるということを教えてくれる!
  • ホドロフスキー監督作品が無性に観たくなる!
<終わりに>

なぜこの記事を書こうかと思ったかというと、今現在ホドロフスキーのDUNE」が配信などで割と観やすくなっているんですよ。

でも、ホドロフスキー監督をよく知らない方は、本作を観るきっかけが無いんじゃないかと思いまして…

実はホドロフスキー監督作品入門にぴったりのドキュメンタリーなので、まだ配信がある内に観て欲しいのです!

 

昔の代表作「エル・トポ」「ホーリーマウンテン」などは配信も無いですし、DVDのレンタルは出来ますが、年々借りづらくなってきています。

【ブックオフ】公式宅配買取サービス

 

 

ちなみに、ホドロフスキー監督は300歳まで生きるそうです!

さすがに無理でしょ(笑)

 

最後までご覧頂きありがとうございました!