この世で一番エキセントリックなアルファベットそれは…X エックス
とにかく"X"とつけて置けば、なんかキマってしまうアルファベットであり、日本にもアメリカにもバンドがありますし、腕を使っても、脚を使ってもXポーズはキマりますね(笑)
2022年、いまをときめく映画製作会社A24(Xじゃないじゃん笑)が、「ミッドサマー」「へレディタリー継承」などアリ・アスター監督のホラーヒット作に続けと、満を持して公開した「X エックス」が大ヒット作品となりました。
ちょっと待って?アルファベットの24番目が…Xですね…(笑)
そして2023年、いよいよ蒸し暑い夏!ホラーの夏がやってきた!(わくわく)今年は3部作映画「X」の前日譚にあたる物語「パール」が公開です。
楽しみにされている方もそうでない方も、70年代のアメリカの田舎が怖~いテキサスホラー「X」の魅力に迫ってみませんか?
<作品詳細>
2022年7月8日日本公開 アメリカ 105分
監督 脚本:タイ・ウエスト
キャスト
マクシーン,パール/ミア・ゴス
ロレイン/ジェナ・オルテガ
ボビー・リン/ブリタニー・スノウ
ハワード/ステファン・ウレ
ウェイン/マーティン・ヘンダーソン
ジャクソン/キッド・カディ
<あらすじ>
1979年。有名女優を目指すマキシーンとそのマネージャーのウェイン、ブロンド女優のボビーと男優のジャクソン、監督のRJとその彼女ロレインの6人は「農場の娘たち」という映画を撮影する目的でテキサスにやって来た。
宿泊する納屋を管理するみすぼらしい老人ハワードはウェインにいきなり銃を突きつけ、歓迎していないムードを漂わせる。
向かいにある母屋の窓ガラス越しからじっとりとこちらを見つめる老女パール。マキシーンはパールと目が合ってしまい戸惑うが、この老夫婦は若者たちに次々襲い掛かる殺人鬼だった…
「農場の娘たち」というエッチな映画の撮影とあって、マキシーン演じるミア・ゴスは裸にサロペット、足元はウエスタンブーツというですね、これをオシャレと言っていいのか(笑)でも可愛いんですよね。
老婆であるパールの役も、特殊メイクでミヤ・ゴスが演じています。
なので当たり前ですがそっくりそのまま年老いた感じです。ホラー映画では死の恐怖が描かれますが、そこに老いの恐怖もプラスされてくるのですから、もう絶望的です(笑)
ストーリー自体はまさに王道で、「悪魔のいけにえ」オマージュとくれば、ホラー映画好きな方なら結末もある程度は読めてしまうスラッシャー映画です。
「悪魔のいけにえ」の終盤。悲鳴をあげるファイナルガールにとどめを刺すため、殺人鬼家族は「昔は5分で60頭の牛を殺した。必ず一撃で牛を仕留めた。」かつて殺害名人だったおじいちゃんにハンマーを握らせようとするのですが、握力が弱っててポロポロ落としちゃうシーンがあります。
笑いながら恐怖に震えるという感覚は後にも先にもこの時だけでしたが、それに近いものを「X」には感じました。
老人ゆえのラストの自滅展開は面白かったです(笑)
トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」とヒッチコックの「サイコ」には数えきれない程のオマージュやパロディ作品があるのでやっぱり観ておきたい!
どちらも無料鑑賞できるのは、古典映画の宝庫U‐NEXTだけです!
もちろん「X エックス」も鑑賞できます!
映像やセリフに「サイコ」「シャイニング」「ブギーナイツ」などのさらっとしたオマージュシーンも見受けられました。
そして、冒頭のカメラワーク。スタンダードサイズ(正方形)かと思いきやカメラが寄っていくと画面が広がりを見せ、両端が影になっていただけで実はビスタサイズの作品だと分かる演出。
それがまた映画の中の映画シーンの間だけ、画角がスタンダードサイズに変わりました。
このように変化する画角や荒くザラついた映像、前半のダラダラしたポルノ撮影風景から後半畳みかけるように事件が起こる感じは、タランティーノ監督の「デス・プルーフ」のようなグラインドハウスムービー(エクスプロイテーション映画)のテイストが盛り込まれているように感じました。
簡単に言ってしまうと50年代以降アメリカで量産された、エログロB級映画風という感じですが、作品の中でも「農場の娘たち」というエクスプロイテーション映画を撮る過程を見せているという訳です。
そうなってくるとExploitation filmsだから"Ex"…X!! これですね(笑)
やはり本作の一番の見どころはよぼよぼの老夫婦が殺人鬼という所です。そして次回作「パール」はタイトル通り老女殺人鬼パールの若き日の物語になるようなので、ここはやはりパールに焦点を当ててみたいと思います!
※ここからはネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意ください!
パールおばあちゃんの怖い名言・名場面
「シーッ!ふたりの秘密よ…」
出会ったばかりの老婆に若かったころダンサーだった話や夫の話を一方的に聞かされたあげく、秘密の共有を迫られ怯えていたマキシーン。
ラストでマキシーンとパールはタイマン勝負となりますが、ショットガンを撃った衝撃でパールは吹き飛ばされ腰をやられて動けなくなってしまいます。
おばあちゃん自爆です(笑)
助けを求めるパールに「だまれクソババア」とお返しのシーッ!
マキシーンはやられたらしっかりやり返すタイプでしたね(笑)
「私も凄いのよ…」
撮影現場を覗いて欲情してしまったのか?
老いてなお性欲があること自体は素晴らしいことだと思うのですが、
何故か女優達に対抗意識を燃やし、23歳の青年RJに抱きついてしまうパール。
もちろん拒否されたので、RJを血祭にあげた後、赤いヘッドライトに照らされて踊るパール。一番強烈なシーンでした(笑)
「ブロンドは嫌いなのよ!」
ブロンドに何かイヤな思い出でもあるのでしょうか?
ビッチ!と罵られた挙句、池に突き落とされてしまったブロンド女優ボビーは見事ワニの餌食に…アニマルパニックホラーのワンシーンのようでした!
そして、ナイトクラブの壁画にこんな伏線が張られていたとは…
ていうか…
「私はあなたのものだと言って…今も"欲しい"と…」
やはりパールは凄かった(笑)
前半ではエクスプロイテーション映画の撮影で"見世物としての性"が描かれていましたが、それと対極にあるのがハワードとパール夫妻による命懸けの性です。
全く別物だという事を、私たちは知る必要があるといったところでしょうか?
それにしても、老夫婦の激しい情事をアンダー・ザ・ベッドで目撃してしまったマキシーンのいたたまれなさよ(笑)
こっそり抜け出す様子を天井からのカメラアングルで映すシーン。モザイク処理が施された珍妙な画が好きでした。
まとめ
3部作というところで、やはり本作だけでは少し物足りなさが残りますし、謎も多いです。老夫婦が若さへの嫉妬や欲求不満で殺人を犯すという設定だけでは、少し動機が薄い気がしてしまいました。
第一次世界大戦禍で自分らしい人生が歩めなかったという愚痴をこぼすシーンもありましたし、やはりワンモア何かあるのだろうと…やっぱり、知りたくなりますが…「パール」を観ても納得できなかったらめちゃくちゃ書きますから(笑)
ラストでは3作目が再びマキシーンの物語になるであろう伏線が用意されていました。
エリザベス・デビッキやケビン・ベーコンなど魅力的なキャストまで発表されましたが、またあと1年オアズケなんでしょうか?(涙)
もうホラーの冬でも秋でも…なんでもいいんですよ?(笑)
最後までご覧頂きありがとうございました!